architecture urbanisme

190215【都市系講義】空き家対策の諸相:空き家に居住を回復するためにフランスと日本ではどのような対策をとっているか?リール都市圏における「まちづくり」の例

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概要

フランス・リールの「空き家対策」の考え方と実践について、恵比寿の日仏会館会議室で報告会が行われた。講演者として、空き家対策を主導する組織「SPLA」のヴァンサン・ブガモン、ルイ・ミシェルの両氏を迎え、その翻訳と解説を小柳春一郎獨協大学法学部教授が担当された。

SPLAとは

La Société publique locale d'aménagement "La Fabrique des Quartiers"

の略称で、「街区創出(まちづくり)」と名付けられたリールの地域整備・地方公企業のことである。民間企業としては収益が望めない分野に公的な補助金を投入して、都市問題の解決を進める受け皿となっている。スタッフは公務員の肩書を残したまま、SPLAに参加しているものも多いとのことで、日本でいうところの第三セクターと考えてよいだろう。

講演は3部構成で、以下のようなテーマが扱われた。

第1部:フランス北部の商業都市リールとその都市圏の特徴と現在抱える問題点の指摘
第2部:その問題解決のために創設された「まちづくり」組織のミッションと活動実績の紹介
第3部:空き家リサイクル事業の具体的な戦略と分析

感想

フランスの都市計画は、オースマンによる19世紀のパリ大改造以来、公的機関が強力なイニシアティブを発揮しながら進められてきた。結果が出ているかどうかは別にして、良好な都市環境の創出に関係のあるプロフェッショナルたちを組織に組み入れて、コラボレーションしながら総合的に対処している印象を受ける。SPLAにも、建築家や都市計画家はもとより、法律家、社会学者、不動産関係者、そして商業活動のプロまで参加している。状況分析・空間提案・収益計画まで、ワンストップでスピード感を持って問題解決に繋げようとする合理精神が垣間見えるのである。

この背景には西欧の都市が抱える危機感がある。たとえば、日本で巷にあふれる「花の都パリ」のイメージとは裏腹に、一歩その郊外に出てみれば、急速にスラム化しつつある取り残された街区が存在するという現実がある。西欧諸都市における都市問題は、切迫した喫緊の社会的課題と考えられているのである。もっとはっきりいえば、国内的安全保障問題に近い。これは、都市を社会問題ではなく、もっぱら経済問題として捉えている日本の指導層には理解困難な状況かもしれない。

気になったのは、この種の社会貢献活動における建築家の役割である。建築家の間では、建築家こそがすべての領域を統括し、主導的な役割を果たすべきだという考えが根強く存在する。しかし、現実は違う。たとえば、日本では建築家なしで建物は建てられ、建築家の関与しないところで都市が形成されている。震災復興においても、建築家といわれる職能が主導的役割を果たした事例がいくつあるだろうか。SPLAの中での建築家の役割は、主導的なものなのか、それともその他大勢のエンジニアと同等な立場なのか、気になった。

なお、SPLAの活動には各種の報告書が出されており、Webサイトよりダウンロードが可能である。

ダウンロード可能な資料の例:RAPPORT D'ACTIVITÉ 2017, La fabrique des quartiers

http://www.lafabriquedesquartiers.fr/images/Rapport_dactivit%C3%A9_2017_web.pdf

参考URL

日仏会館 アジェンダ

https://www.mfj.gr.jp/agenda/2019/02/15/2019-02-15_koyanagi/index_ja.php

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