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190401【cinéma評】グリーンブック GREEN BOOK

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Green bookとは?

本作は、黒人アーティストが1960年代の人種差別の残るアメリカ南部でツアーを行う際に、白人の運転手を雇い、様々な事件を経て友情を深めていく物語である。第91回アカデミー賞作品賞・脚本賞・助演男優賞を受賞している。

1960年代中頃まで、アメリカの南部諸州には人種隔離法が存在しており、白人とそれ以外の有色人種を空間的に隔離することが一般的であった。

1964年の公民権法(Civil Right Act)によって、公式な人種差別は違法となったが、劇中のツアーはそれ以前の差別の残る1962年の設定となっている。ちなみに、1961年に第35代大統領となった J.F.ケネディは1963年にダラスで暗殺されるまで人種差別撤廃に取り組んでいた。その政権で司法長官を担っていたのが劇中でドクが電話を掛けた相手、弟のロバート・ケネディである。

このような時代に黒人が車などで旅行する際に、安全に利用できる飲食店や宿泊施設などを紹介したガイドブックが、通称Green Bookと呼ばれ、この映画のタイトルになっているのだ。

映画の中では、ジャズ・ピアニストであるDr. Shirley(ドク)と Tony Vallelonga(トニー)がアメリカ南部の演奏ツアーの際に参照する小道具として使われていた。

異なる社会階層に属する者同士の交流の物語

社会的身分の異なる黒人と白人が交流を深めていく映画といえば、フランス映画『最強のふたり(Intouchables)、2011』がある。これは、体が不自由な白人富豪とその介護人としての黒人という設定だったが、『グリーンブック』は逆になっている。

共通点は、実話をベースにしている点と、二人の交流を通して社会的な問題に批評的なスタンスを取っている点である。『最強のふたり』のほうが、どちらかといえばコミカルな演出が見られるが、それでもパリ郊外に居住するアフリカ移民2世や3世世たちの現状はきちんと描かれていた。

悪いのは誰か?

劇中で、二人は様々な困難にぶつかる。最初はお互いの偏見という壁だ。そもそもトニーは黒人を快く思っていないイタリア移民に属している。しかし、当時のアメリカ南部では常識となっていた、黒人というだけで向けられる差別的な待遇を共に経験することで、当初は自らも差別意識を持っていたトニーも次第に変わってゆく。

一方で、ドクは、白人の文化的な伝統に属していながら、見た目が黒人であることによる差別を受け、苦悩しつつも暴力を否定する。そして、人種差別の残る地域でツアーを敢行するのだ。

ここには、差別や偏見は、相手の立場になれば解消できるというメッセージが読み取れる。相手と自分の立場を入れ替えて、環境や思考をシミュレートしてみれば、納得がいくことが多いのである。

悪いのは、目の前の相手ではなく、その判断を余儀なくさせる環境や社会的背景なのだ。その意味では、劇中に登場する様々な差別的な言動をとる「悪役」たちも、実は被害者なのである。

参考情報

『最強のふたり(Intouchables)、2011』
※05:11からBGMにEarth, Wind & Fireの『September』が流れるのが、また、いい!

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