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190226【建築系講演会】アルヴァ・アアルトの魅力/和田菜穂子@OZONE新宿

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概要

新宿のリビングデザインセンターOZONE会議室で、現在、東京ステーションギャラリーで開催中のアルヴァ・アアルト展「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」の監修を担当した建築史家である和田氏による講演会が開催された。

「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」展は、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムが企画し、2014年から世界巡回展として開催されている。今回の日本での開催は和田氏が招聘したということである。建築模型、ドローイング、家具など約300点が展示されている。

日本での開催は、神奈川県立近代美術館(葉山館)を皮切りに、名古屋市美術館、東京ステーションギャラリー、青森県立美術館を巡回する。今回の講演は、既に終了した葉山や名古屋での展示の紹介から始まった。東京展と展示物は同じであるが、空間構成や配置が異なるため、会場ごとに新しい発見があるとのこと。

アアルトの魅力

今回の講演の内容は巡回展とその見どころ紹介とともに、アアルトの魅力について、主に3つのトピックが語られた。

1.人間味あふれる生涯

アアルトの活動拠点の変化と作品の傾向の関連、好奇心旺盛だったアアルトの趣味、二人の母と二人の妻など女性への敬い、アアルトのクライアントや協働者像など。

2. 建築空間

北欧の建築における「光の扱い」の重要性、代表作であるマイレア邸(1939)の魅力、アアルトのキャリア形成における1937年のパリ万博の重要性、自然との対話が考えられた空間構成など。また、曲線をうまく取り入れたパイミオのサナトリウム(1933)、アアルトが設計したいくつかの図書館の特徴などにも話が及んだ。

3. 生活に密着したプロダクト

アアルトが創設したartek社による家具や、イッタラ(Iittala)社から発売されているガラス器などのデザインと製法などについて。

最後に、森林管理官であったアアルトの祖父が残した「人間は森なしでは生きていけない」という言葉によって、アアルトの作品に通底する自然へのまなざしの起源が示された。

感想

今回の講演は、アアルトの建築の真髄を分析する建築論的なものではなかった。どちらかといえば、さまざまな人達との関係や遍歴という側面から、アアルトの人間的な魅力を読み解くものだったといえる。

建築史的観点からとくに興味深かったのは、巡回展では触れられていない、1937年のパリ万博での逸話であった。この万博のパビリオンの設計でグランプリを受賞したことから、アアルトの国際的な評価が高まったとのこと。そして、このときの日本館の設計で同じくグランプリを取ったのが坂倉準三だった。

なお、今回の講演会では、後期アアルトの空間構成の最大の特徴である「フィンガー・フォーム」については、特段の解説がなかったのは残念であった。

フィンガー・フォーム は、近代建築の文法であるキュービックなボリュームにこだわらず、現実的な利用形態などから導かれた「機能的」なアプローチである、という説明がなされたのみであった。より詳細な分析について調べてみたい。

参考情報

展覧会

アルヴァ・アアルト もうひとつの自然
東京ステーションギャラリー
2019年2月16日(土)- 4月14日(日)

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201902_aalto.html

展覧会図録

https://www.amazon.co.jp/dp/4336062897

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