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180926【建築系講義】 佐藤真・坂口大洋『ホール/劇場/アートセンター』文化の居場所を考える@立教大学

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【概要】
9月26日に池袋の立教大学において、立教大学社会デザイン研究所による「文化の居場所を考える」講座の第3回目が行われた。今回は演劇のための空間設計をテーマとして、建築計画及び演出家を招いて、約2時間の講演・討議となった。

登壇者は、講師として佐藤信氏(劇作家・演出家)、ゲストに坂口大洋氏(仙台高等専門学校[建築計画・文化施設運営])、コーディネータは高宮知数氏(立教大学)であった。

まず、坂口氏による「劇場の系譜に向けた一考察」というレクチャーから始まった。劇場について理解するために、視軸(しじく)という観点が提示され、古代ギリシアの劇場から、現代の西欧文化圏での劇場史が紐解かれた。そこから、日本の劇場の歴史を概観し、その特殊性が指摘されたのである。その後、問題点と改善策のヒントが示され、今後の論点が明らかになった。

次に、佐藤氏による「もうひとつの場所」と題された、劇場空間の社会的な意義を確認する講演が行われた。劇場という存在に社会性を持たせるための、時間や商圏の具体的な数字が示され、舞台装置を巡る設計者や出資者との確執までが語られたのである。実体験に基づいた具体的なデーターをもとにした分析により、劇場が果たすべき公共性とその実現を阻害する要因が明確になった。「なぜ劇場が必要なのか」という根本的な問いを追求する、透徹した思考プロセスには大きな説得力が感じられたのである。

【感想】
近年、改善が進んではいるが、日本の劇場を巡る法的・社会的環境は予断を許さない状況にあるようだ。劇場というビルディングタイプは近代化の過程で輸入されたものだが、演劇の文化的価値を理解する指導者に恵まれず、その当時から続く問題が現在でも尾を引いている。公共性という概念が明確ではない日本では、劇場とその生み出す文化的環境についての理解が進むには、まだまだ時間が必要と思われる。

佐藤氏の劇場裏話には、劇場という場を維持していくための、なまなましい現実が鮮やかに表現されていた。「劇場は畑である(佐藤)」という視点が新鮮に感じられ印象に残った。

official site 文化の居場所を考える
https://ibasyo-kouza.jp/

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