cinema 動的平衡生命論

180630【cinema評】是枝裕和『万引き家族』

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家族という問題は、現代の芸術表現の最もポピュラーなテーマの一つである。是枝作品はその問題を継続的に、かつかなり冷静なフレームで切り取ってきている。この『万引き家族』もその系譜に載る、最良の作品のひとつである。

この作品では、さまざまな「家族」に関する問いかけが緻密な構成の中に仕込まれている。自分で家族を持って、初めて響くような部分もたしかにあるだろう。そして、すべての問いかけは、あるひとつの問いに収束する。

「家族であるためには、血縁は不可欠な要素なのか?」

現代では、さまざまな事件が示すように、血縁があっても家族としてのつながりが保証されるわけではない。弱い立場の人間は、さらに弱い立場の人間にその弱さを押し付けてしまうからだ。しかし、それは責められることなのか?

血縁による家族が成立する基盤が希薄になってしまった現代では、血縁のないつながりこそ純粋な家族になり得るのではないか。

制度に依拠した価値観は、制度の内側に止まろうとする存在にとっては至極居心地の良いものだが、制度の外側で緩やかに繋がろうとうする存在にとっては、厄災でしかないのだ。

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