18世紀フランス文学

181022 Les Bijoux Indiscrets 『おしゃべりな宝石』 (Chapitre VII, pp49-50)

更新日:

Chaptre VII SECOND ESSAI DE L'ANNEAU / LES AUTELS
第7章 指輪の2回目の試用 祭壇

読解のポイント

1. La migraine について
La migraine とは偏頭痛のことで、18世紀のフランス社交界では、会合などに出席できない理由としてよく用いられた。百科全書にも医学用語として項目が建てられており、モンペリエ大学のメヌレ・ド・シャンボー Ménuret de Chambaudが執筆している。ちなみに『ダランベールの夢』では同じくモンペリエ大学のボルドーという名の医学者が登場する。

2. 百科全書の項目の記述スタイル
百科全書の医学項目は、主に以下のような内容で記述される。
1.用語の定義
2.語源
3.症状の説明
4.学説など

3. 18世紀の医学のキーワード:l'observation
「観察」という行為は、客観的事実から物事の道理にアプローチする近代的思考にとって、もっとも重要な行為の一つとなっている。

4. 女性に対するシャンボーの見解
偏頭痛になりやすい人の例として、家に引きこもっている有閑生活をする女性や、既婚で不妊症の女性が挙げられている。現代では、女性差別に当たると思われるが、18世紀の医学では因果関係があると考えられていたようである。

5. 18世紀宮廷文化のキーワード:la bienséance
冒頭5行目のbienséance, f (礼儀作法、礼節、趣味の良さ) も18世紀の宮廷文化を理解する上で重要なキーワードである。

6. 男はあてにならない
この第7章では、社交界での話題の一つと考えられる「男はあてにならない」という女性側からの主張に話が収束してゆく。宝石と恋人のどちらがましなのかという問いから、恋人(男性)は、恋愛話に尾ひれをつけて吹聴するのに対して、宝石は客観的な事実だけを述べるとして、宝石のほうがよい、という意見が登場する。

7. 18世紀宮廷文化のキーワード:le ridicule
情事に関する話を暴露されると、社交界では le ridicule(笑い者)として扱われる可能性がある。これは、もっとも恥ずべきこととされていて、 Le ridicule tue. (笑い者になるのは死に値する)という表現もあった。なお、この当時、相手をあからさまに笑い者にすると、決闘を挑まれるので注意しなければならなかった。

8.『盲人書簡』と共通の構図
この章における「宝石」と「恋人」の関係は、宝石が客観的で真実に近く、恋人は情念があるため話に尾ひれがつくという対立するものとなっている。これは、『盲人書簡』における、「盲人」と「健常者」の関係に同様の対立の構図を見ることができる。「盲人」は、視覚が欠如しているおかげで、物事の本質を理解する可能性があるが、「健常者」は目は見えるが偏見を持っているため、物事の本質は見えていないとされる。

資料出典:Denis Diderot, Les Bijoux indiscrets
Editeur : Flammarion (7 janvier 1993)
Collection : Garnier Flammarion / Littérature française

このページでは、18世紀フランス啓蒙主義期の思想家・美術批評家・作家であるドゥニ・ディドロ Denis Diderot 1713-1784による小説の対訳や読解のポイントを掲載しています。

『不謹慎な宝石』wiki 

-18世紀フランス文学

error: Content is protected !!

Copyright© TOKYO見聞録 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.